2009年2月7日土曜日

拓銀破綻の根本原因 Vol.3

誤解無い様に断っておきたいのですが、私は、基本的に、拓銀には今でも感謝しております。
「大学卒業したばかりの若造で、何の実績もない癖に、異常に生意気であった私」に対して、名刺の渡し方、挨拶の仕方から教えてくれたのですから。
こうした基本教育は、あの当時は、「馬鹿らしい!」と思っていましたが、今となっては、その後のビジネスマン生活に、非常に役に立っていると思います。
まあ、少なくとも最初の1年間は、まったく戦力になっていなかったどころか、支店の先輩の足ばかりを引っ張っていたと思います。
そんな私を、根気良く教育してくれた先輩方には、深謝しております。

と一応、断った上で、拓銀破綻の原因追求を続けたいと思います。
最初に配属された道内地方都市の支店で、入社3年目に体験した市場原理を無視した「馬鹿らしい話」について説明したいと思います。
(既に破綻した会社ですが、旧社員の私には今でも道義的な意味で、守秘義務があると考えるので、ある程度、ぼかして記載をします。御理解いただきたく。)

流動性預金の一種である「貯蓄預金」の口座獲得キャンぺーンというのが、拓銀全支店を挙げて展開されました。
普通預金の様に、出し入れは自由、それでいて金利は高い。ただし、残高10万円以上と言う縛りのある商品です。
もちろん、流動性危機(つまり資金繰り悪化)に悩む当時の拓銀にとっては、貯蓄預金に限らず、預金残高を増やす事は、至上命題でしたから、
このキャンペーン自体は、意味のあるものです。
こうして、私の支店も、口座獲得に邁進しました。
ある程度、大きな支店であった私の支店は、順調に口座数を伸ばしていきました。

キャンペーン期間の途中からは、札幌市内の大きな支店と、獲得口座数で、上位を争うレベルにまで、達しました。
その時、支店の上層部は、何をトチ狂ったのか、「全支店内で必ず一番になれ。」と指示を出しました。
しかし、人口が10万人超の我が地方都市では、もちろん限界があります。
しかしながら、この狂った指示を受け、上意下達の意識の強い、支店の中間管理職以下は、またもや何も考えないロボットへと化しました。

というのも、キャンペーンの最初の頃は、入金10万円以上で、「正しく口座獲得」をしていたのに、
この指示(命令)が出てから、「初期入金千円でもいいから、口座を作れ。」になり、その次には、禁じ手のゼロ新規、
つまり「入金ゼロでもいいから、口座数を増やせ!」になりました。
そして最後には、支店の職員全員に対し、「おまえ達の親戚全員の名義で、口座を作れ!」になりました。
実際、私も東京に住んでいる親や親戚の名義で、口座を作りまくりました。
(それも一人の親戚名義で、2口座とか、3口座を。)
確か、私だけで20口座位は、親戚名義で作ったと思います。

こうした「営業努力」により、ウチの支店は、札幌市内の複数の大店を抑えて、トップになりました。

そして、営業努力賞として、本部から役員が来てPartyが始まり、記念品が贈呈されました。
その横では、わが支店長が、ぺこぺこしながらも、満面の笑みを浮かべていました。
支店のある中堅職員は、そのPartyで、もっとも口座獲得に功労があったと持ち上げられ、スピーチをしました。
曰く、「トップに立つのを諦めそうになった時もあったけど、頑張って良かったです。。。。」と中学生でも言わないようなコメントを発しました。
そして、支店職員全員で拍手と乾杯。

しかし、こうした作業が、いかに無意味で馬鹿な事か説明するまでも無いでしょう。
あの当時、口座を一口座作ると、銀行全体では、口座維持の為の潜在的な費用として、
年間1000円以上が銀行内部の事務処理でかかると言われておりました。
今でも同じな筈です。
ですから、一部の外資系の銀行等は、年間残高平均が30万円以上でないと、口座維持手数料で、年間、数千円を徴収するという事をやっております。
「経費を掛けて、Human Resourceを割いて、利益の全くでない幽霊口座を作りまくる。」事に何の意味があるのか?
どうして、支店幹部や中間管理職は、こうした馬鹿な行動を止められかかったのか?
そして、本部の役員こそ、この手の「点数稼ぎ」を強く静止すべきなのに、Partyで酒を飲んで、ふんぞり返っている。
そして、我々、一般スタッフは一般スタッフで、なぜ、何の疑問も持たず、ただ指示には従っているのか?
なぜ、全員が全員、思考停止状態に陥ったのか?

この事象が象徴する拓銀行風の問題点はたくさんあると思います。

つづく。

0 件のコメント:

コメントを投稿