2016年9月13日火曜日

【USCPA】 弁護士の方から、USCPAに合格したとのメールを頂きました。  ~ 司法試験 vs 米国公認会計士試験

最近、USCPA関係で、メールをよく頂きます。(先週末だけで、3名の方からメールを頂きました。)
その3名の内の一人が、合格者の方で、その方とメールの遣り取りをしたので公開します。

合格者との遣り取りと言う意味では、去年(2015年)11月の「米国のMBAホルダーで、USCPA試験に合格された方の記事」が、非常に反響が高かったです。
⇒ 【USCPA】 Eさんの意識の高さに、大いに刺激を受けた!

今回、御紹介するDさんも、Eさんと同様に、とても知的好奇心の高い方で、貴公子自身が、強く刺激を受けました。
こんなに意識の高い方がいるんだと、衝撃さえも受けております。
皆さんの意欲向上にも、お役に立てると嬉しいです。

今回、御紹介するDさんは、某私立大学の法学部出身で、現在、国内金融機関にて社内弁護士をしている方です。
勉強期間は2年で、予備校を利用しての合格です。

MBAとUSCPAとか、JCPAとUSCPAとかの組み合わせは、たまに聞きますが、弁護士との組み合わせは、初めて聞きました。
単純に考えても、凄いのですが、やはり、「弁護士がなぜ?」と言うところが気になりました。

何度かでのメールの遣り取りの中で、下記のご質問をし、下記の御回答を得ましたので、公開します。
当然、読者の人が最大の感心を持っている、「あの件」もお聞きしました!

(以下、遣り取り)
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貴公子質問1)
金融機関をお勤めの社内弁護士との事ですが、なぜUSCPA試験を目指したのでしょうか?
目指しているキャリア像に関して、教えてください。
(あるいは、自己啓発的な意味で、格別な理由は無かったとかでしょうか?)

<Dさん回答>
知識面から:
たとえば、司法試験の勉強で(商法で)「経営判断原則に従っていれば適法」という条文解釈を学ぶのですが、
その実は、IRRであったりCAPMであったり、ファイナンス理論に従っているか、です。法律を知っていてもこういった知識がないと最終的な結論に至らない、ということにショックをうけ、法律知識だけだと限界だらけである、ということに気づきました。この思いは会社に入ってからますます強くなりました。
上位職の必須の教養として:
BoardMemberは会計知識を持っておくべきという考えがアメリカでは一般的であり、そ の下で働く者にも当然知識が要求されると知りました。いずれ日本でもそのようになるだろうと、感じていました。
以上が主な理由です。

(貴公子質問2)
USCPAの勉強期間と本試験の戦績(〇勝〇敗)を教えていただきたく。

<Dさん回答>
何とか2年で通りました(働いて間がなく、お金がなかったので最も安い予備校に行きました)。しかし、少し前のブログ記事でもあったように、いろいろと犠牲にしなければなりませんでした。特に妻や子供には申しわけなかったです。徒然草59段にも同じような話がありますが、ぐっとこらえて集中するしかありませんでした。
FAR1回(86)、AUD4回(74→72→72→90)、BEC3回(72→74→77)、REG1回(84)の計9回受け、受験費用は70万以上短期間で使いました。「74点は合格からはるかに遠い」「BECと戯れてはいけない」等CPA格言を身をもって知りました。受験中に不安になったときは、司法試験のとき知恵で「結果の不安か、過程の不安か(結果なら悩むだけ無駄。過程なら目の前の教材を信じて進む)」の分析をしたり、「夜明け前が一番暗い」という暗示によって救われたように思います。
WCは思った以上に鬼門でしたが、毎日1題書くという、結構しんどいノルマを課して(another71の投稿を読んでそうしました)、何とか克服しました。

(貴公子質問3)
それと、勉強開始時点の英語力を教えてください。
TOEFLとかTOEICの点数等があればそれもお願いします。

<Dさん回答>
⇒司法試験に大学4年間∔3年間を費やし、英語からは全く離れていました。会社に入ってからTOEICがある程度ないと恥ずかしいので必死に勉強し、何とか850点取れました。これが開始時点の客観テストの点数です。ただ、英語の質はCPAとは全く違うように感じています。なお、業務で英語に触れることは皆無です。

(貴公子質問4)
司法試験は国内で、最難関試験と言われておりますが、Dさんにとって、USCPAとの難易度比較はどうでしょうか?
司法試験の方が、〇倍くらい大変だったとか、そう言った体感的なFeelingでも構わないので、是非とも教えていただきたく。

<Dさん回答>
司法試験の難しい点:
・年に一回、8科目同時受験
・朝から夕方まで4日間缶詰
・(専業受験生だったので)落ちたら無職のままという不安
CPAの難しい点:
・なんといっても英語
・日本語ベースの情報量の少なさ

以上のような特殊性があるので比べるのは難しいですが、司法試験が3倍程度難しかった、というFeelingです。

貴公子質問5)
両方の試験を受けての率直なご感想を聞かせてください。

<Dさん回答>
法学は、抽象的なルールを千差万別の事案に当てはめる、という意味で聖職者のする聖書の解釈に通底しているといわれています。(いまでも中東では宗教家=法律家であります。)
そういう意味でも権威があるほうが正解という、科学ではない世界であり、合理的な思考が通じない場面が多々ありました。原則が3ページ・例外が10ページという教科書の構成に嫌気がさして法律の勉強をやめた人も多くいました。
一方、CPAはとても合理的で実務的な内容で、会計知識ゼロの門外漢ながらとっつきやすかったです。
このように勉強の対象に違いがありますが、司法試験もCPA同様結局は①知識量と②知識の使い方で決まる、という意味では共通しています。
そして、①は集中力と忘却曲線の理解があればほとんどの人が合格水準にもっていけますので、合否を分けるという意味ではやはり②がどちらも重要だと思います。司法試験は、とがった人を落とす試験(いかに「普通の」考え方極めるかの試験)ですので、多くの人がたどる思考に沿った知識の使い方が要求される点がかえって難しいです(司法修習時の教官も平時に合法的に人を殺すことができる職業に、とがった人間は危険だからとおっしゃっていたようです)。一方、CPAでの②は出題者の意図を考えて、ヒッカケに気づく程度で良いという感触でした(この意地悪なヒッカケが多いのですが)。


貴公子質問6)
貴公子自身は、司法試験の勉強をした事はありませんが、あの明治文語文みたいな試験問題は、正直、見るだけで辛いです。
また、六法全書を引きながら、ボールペンで答案作成すると言う試験形式が、少々、20世紀的にも思えます。
その意味で、クラウドベースのUSCPA試験の方が、21世紀的でクールに感じてはおります。
その辺は、どうですか?

<Dさん回答>
見るだけで辛い、という得体の知れなさ(?)神秘さ(?)が、権威しか拠り所のない法律にとって譲れないものなのかもしれないです。
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これだけ意識の高い方ですので、感じる事は色々あると思いますが、貴公子は下記の様に感じました。

法律を知っていてもこういった知識がないと最終的な結論に至らない、ということにショックをうけ、
>法律知識だけだと限界だらけである、ということに気づきました。この
>思いは会社に入ってからますます強くなりました。

ここは、強く同意いたします。
IT技術もそうですが、少し前までは、IT技術者は、Routing Tableがどうのこうのとか、Firewallポリシーだとか、プロトコルだとかのIT用語駆使して、IT技術者の中でしゃべっていれば良かったのですが、最近は、業務知識とか業界知識がないIT技術者はダメになっております。

例えば、仮想通貨関係の技術者ならば、貨幣論の知識がないと仮想通貨の正当性を語れないし、Fintech系のアプリ開発者には金融実務知識が必要です。
私が最近、関わっているIoT関係ならば、物流管理とか工場管理の実務能力が必要となっております。
つまり、「幅広い知識」が求めれれており、昔みたいなITマニアとか、英語オタクとかの「シングル専門性」だけでは、ビジネス界で勤まらなくなっていると感じております。

>上位職の必須の教養として:
BoardMemberは会計知識を持っておくべきという考えがアメリカでは一般的であり、
>そ の下で働く者にも当然知識が要求されると知りました。いずれ日本でもそのようになるだろうと、
>感じていました。

これは、貴公子もUSCPAの受験時に意識しました。
「上位職として、財務知識はあって当然」と言う意識で、私も勉強しました。

>司法試験は、とがった人を落とす試験(いかに「普通の」考え方極めるかの試験)ですので、
>多くの人がたどる思考に沿った知識の使い方が要求される点がかえって難しいです(司法修習時の
>教官も平時に合法的に人を殺すことが
>できる職業に、とがった人間は危険だからとおっしゃっていたようです)。
>一方、CPAでの②は出題者の意図を考えて、ヒッカケに気づく程度で良いという感触でした
>(この意地悪なヒッカケが多いのですが)。

「尖った人間は法曹としてダメ」と言うのは、貴公子にとっては、とても斬新な意見です。
確かに、エキセントリックな人間が、法律を振りかざしたら、この世が崩壊するので、「普通の常識人」であることは、法曹人の必要不可欠な要素なのでしょうね。
凄く、納得しました。




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