2016年9月25日日曜日

【USCPA】 司法試験とUSCPA試験に両方合格したDさんに、コスパに関する質問をさせて頂きました。

10日ほど前に、アップした下記記事ですが、早速、いくつかの反響がありました。

そうした反響の中で、貴公子も興味を持ったのは、司法試験の「コスパ」についてのコメントです。

司法試験は、日本最難関の試験であることは間違いないと思うのですが、その難易度に対して、最近は、「得られる報酬」が伴っていないのではないか? と言うのが、司法試験部外者からの率直な感想です。
例えば、ITなら、ごく普通の若者でも、大学とか専門学校でプログラミングを2年程度学べば、JAVAとRubyとかのプログラミング言語を3~4言語はマスターします。
(勿論、それなりに真剣に勉強 する必要はありますが、司法試験の寿命が縮まる様な必死さは不要です。)

そして、プログラミングをそれなりに扱えれば、日本はもとより世界中から、それなりの高給でJobがオファーされたりします。
その意味では、プログラミングの勉強はコスパが良いと言う事になります。

もっとも、貴公子自身は、コスパ(Cost Performance)と言う言葉は大嫌いです。
「何々したい!」と言う個人の熱い心は、カネには代えがたいものだし、その熱い心こそが世の中を面白くしていると、信じているからです。
ただ、それでも司法試験のコスパをどうしても聞きたくなり、再度、Dさんに質問をし、下記の回答を得ましたので、公表いたします。

Dさん、御回答を本当に有難うございました。
モチベーションの上がる御回答でした。

以下、貴公子質問とDさんの回答
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(貴公子質問)
敢えて質問したいのですが、最難関試験である司法試験をコスパの面から見ると、どうですか?
あれだけの時間とカネと労力を掛けるのだから、金銭的報酬と言う意味では、圧倒的に報われないと「コスパ」と言う意味では釣り合わないと思います。

(Dさん回答)
描いていた理想:3年半程度の勉強、塾代100万円∔α、友達と談義しながら理解を深める・・・。

実際:(私のかけたコストが標準的か分かりませんが、)学部1年生か ら始めて7年、Explicit Cost500万∔α(除く生活費)・Implicit Cost900万(←これらが避けられたコストという意味でRelevantCostでしょうか。言葉の使い方が正しいか自信がないですが)、膨大なテキスト・問題集に目を通していつ役に立つのかも分からない知識と思考順序を徹底的に叩き込み、その間コンビニの店員との会話以外ない日の方が多いという孤独な日々・・・というコストがかかっていました(標準的なコストは、こちらに近いので、これらのコストを総称して、以下、単に「時間とカネと労力」といいます)。「時間とカネと労力」とBenefitの比較は後述します。

(貴公子質問)
率直言って、司法試験という選択は、「コスパ」の面から見ると、若干悪いと思うのですが、Dさん的にはどうですか?
門外漢の私からすれば、20~30年前は確かにコスパは圧倒的に良かったが、最近はどうもキツそうと言うのが正直な感想です。
「確かにコスパは悪い。だけれども、『社会的な弱者を救いたい』と言う熱い思いの為に、カネを度外視して勉強した。 」というお話なのでしょうか?

(Dさん回答)
「時間とカネと労力」に比較するBenefitは何かを考えてみたいと思います。
安定した需要という意味では、地方では刑事事件や相続事件のうまみがあるものの、都市部では交通事故案件が多い印象です。
紛争を飯の種にする以上、必ずあるわけではなく、特に金払いのいい資産家がもめてくれないとオイシイ収入は得られないように思います。
デカい訴訟も頻発するものではないです。
その他、海事事件や倒産事件は一定の需要が見込めるものの、扱う弁護士がムラを作っており、そこに入れるかどうか、という不確定要素があります。
このように、需要を読みにくい仕事ですので、固定客の少ない所謂イソウロウ弁護牛は、事件があれば3年くらいをめどに雇われるし、それ以後は出 ていくことが前提で事務所に雇い入れられるという不安定な就労形態が一般的です。
なお、一般的に、経済的なセンスも乏しく、リスクを嫌う法曹にとっては、コンサルは向かないようです。
したがって、金銭的に成功するかは、人脈作りや営業活動にどれだけ力を入れるかにもよると思います。
短期的に確実に得られるBenefitという意味では強固な人脈、自己満足。
長期的には、定年が無いので老後の小遣い稼ぎ、良い案件があれば機を見て独立できるという安心感、といったところでしょうか。

なお、コストの話に戻りますが、司法修習終了後も、弁護士会費という固定費だけでもバカ高く最高の山口で年1,166,400円、最低の愛知で年498,000円(東京は60万程度)です。さらに独立ということになると、少なくとも事務所の家賃や事務員給与が必要です。

こうしてみると、標準的な「時間とカネと労力」 < Benefitと判断できる要素は実際には少ないですので、私のかつての「理想」のように効率よく合格するのでない限り、「コスパ」の面から見ると、特に短期的な視点では非常に悪いということは確実だと思います・・・。
やはり司法試験という選択は、「時間とカネと労力」の多大なストレスに耐えてでも地盤や看板を引き継いだり手に入れられる見込みがあるか、よほどDecisionMakingのセンスがないかどちらかではないでしょうか。
(私は後者で、実態を知らずにまぁまぁ儲かるかもしれないと思っていたり、「正義を語る」ということにあこがれるという青臭い考えだったりでした)。
やはりコスパを度外視できる恵まれた環境がないと、なかなか踏み出しにくいのではないでしょうか。
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如何でしょうか?
USCPAのライセンス維持代金もそれなりにカネが掛かると思っておりましたが、弁護士会費に比べれば、格安の格安です。

まあ、それはさておき。

>私のかつての「理想」のように効率よく合格するのでない限り、「コスパ」の面から見ると、
>特に短期的な視点では非常に悪いということは確実だと思います・・・

これが司法試験のコスパ論の本質なのでしょうね。
ただ、「正義を語りたい。」と言う熱い気持ちを持つDさんの様な方にとっては、司法試験合格の価値は、計り知れないレベルな訳で、その夢を追って「多大なストレス」に耐えて、合格したDさんは、勿論立派だと思います。

やはり、何事もパッションがないと成し得ないと言う、いつも通りの結論ですが、それを再確認できた貴重なDさんの実例であったと思います。

兎に角、失礼な質問にも、丁寧に答えて頂いたDさんに、改めて御礼を申し上げます。
ありがとうございました。

皆様にも、何かの御参考になれば!

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